メモ:外国語上達法

外出する機会が減って刺激に乏しいので、なるべく毎週、何でもいいので、いつもと違うあたらしいことをやろうと心がけています。

今日は本の片付けの延長で、気になった箇所の引用メモ。チェコ語翻訳者として有名な千野栄一先生の『外国語上達法』から一説を引用します。

「目的派」と「手段派」

閑話休題。外国語を学ぼうとする人の目的は、大きく二つに分かれる。一方の人は、その外国語を学び、この外国語を知ることが目的である人である。私の恩師のR先生が次々といろいろな外国語をモノにされ、その文法構造を通じてご自身の言語学の研究に役立たせようとされているのは、この例である。役立たせる目的がなく、外国語を学ぶことを目的にしている人は悲劇である。

ところで、外国語そのものを目的としている人を、仮に「目的派」と呼ぶことにする。目的派には、言語学を学んでいる人のように「目的利用派」と、ただ外国語を学ぶことが目的の「目的そのもの派」の人がいる。全体から見ると目的利用者はごく少数の人であり、目的そのもの派はそれよりずっと多い。この派の人はやがて目的利用派になり後述する「手段派」に転ずることは可能だが、その存在自体にレーゾンデートルがなく、語学習得に失敗する可能性が高いグループである。

語学習得の理由のうち一番有力なグループは『手段派』と呼ばれるグループで、この派に属する人達は、語学を習得してそれを手段にしていこうとする人たちである。語学学習では最大のグループを形成しており、その派の人達はある外国語をモノにして、それを使って仕事をしようとしているので、学習の目的がはっきりしている。従って、目的そのもの派より成功率は高くなっている。読者の皆さんには、ここで自分がどの派に属しているかを考えてごらんになることをおすすめする。

(『外国語上達法』千野栄一著,岩波新書(黄版 329), 1986, pp.204)

英語(語学)ができるようにならない人の特長/できるようになるためには…といったコツや秘訣を英語学習法で何度も目にしたり、お話を聞いてきたのだけれど、やはりずっと前から言われていることは同じかなとも思ったのでメモ。「いつか使えるようになったら使おう」というのでは言語は使えるようにならないと思う。

またモチベーション維持に関して、「外国映画/小説が好きだから」「英語でしゃべれたらかっこいいから」は万人には通用しないからダメだという人がいた(モチベーションの維持にならないので上達するのが難しい)のですけど、それは直前の「手段」にならないからではないかと思う。「英語でしゃべれたらかっこいいから」は手段にならない人でも「英語ができたら○○でお金が稼げるから」というのでOKな人もあろうし、お金は関係ないという人もおられるだろう。逆に私のような人は「○○が読めないとこまるから/YouTube動画をタダで見たいから」などの低俗な目標でかなりできるようになった(笑)結局は毎日続く程度のモチベーションであれば、何でもいいように思う(ただし、目的でなく手段であるべき)

あとは、その毎日についてこうも書かれている。

この本の中ですでに何度か登場したJ・トマン博士は、既出の自著の最後のところで「外国語学習の結論として」という章を立て、その中でもう一度、次のようなことに注意をうながしている。

「外国語の習得に際しては、ささやかなあまり大きくない目標をたて、それを遂行していく方がよいであろう」

そして最後にコメンスキーを引用して、「外国語を学びたいものは、順番に段階だてて学ばねばならない。まず理解するようにし、ついで書けるようにして、それからやっと話すことを学ぶほうがいい」。

(pp.200,同書)

孫引きどころか、なんとひ孫引きまでしてしまったけれども、大人(子供や最低限の会話だけでは違うかもしれない)が諸外国語を学ぶ言語はそのようなことなのかもしれない。いま読んでもたくさんヒントになることが書いてある本で、どの言語をやりたい人にも面白いと思います!