Mediumが話題にのぼる

日本のウェブメディアでもすでに多数報じられているBezosの落とした爆弾記事ですけど、Mediumユーザーならだれでもが「お! Mediumで!」と思ったのではないでしょうか。

Jeff Bezos made Medium cool for once (Verge)

Jeff Bezos chose Medium for possibly the most important blog post of his life(Marshable)

同じように、この2つのIT系メディアもそんなタイトルの記事をアップしてました。

2年前に経営体制を見直してほとんどの営業部隊をカットしたMediumだけれど、昨年11月のWeb Summitではビッグゲストの1人としてイベントの大トリに登壇したMediumのCEOであるイブ・エヴァンスは、IT起業家のあこがれの存在で、全く「衰退」の様子は見せていなかった。メインステージでの大トリの講演を終えたあとに30人ほどの報道陣を囲んだプレスカンファレンスで質問を受けた彼は、やるべきことはまだまだあるけれどもMediumは好調です、と話していました。囲み取材には慣れてない私ですが、参加したヨーロッパを含むネットゲンロン圏(ブロガー圏でもないのかな)を観察しつつプラットフォームを利用している記者たちからは、好意的な質問が多いなという印象で、熱狂的ではないにせよ、Mediumは暖かく成長を見守られているところがあるのかな?という印象をうけた。

もちろん、日本では「早々の一次撤退」だと私はうけとってたんだけど、それは言語やローカライズ(およびブログ自体が言語の問題なので)が必要なのかなとは思ってました。が、実際のところ、Ev Williamsにとっては「日本には一度もアプローチしたこともないし、Mediumは進出する準備もできてないけどTwitterのことがあるから期待はある」という考えのようです。(日本にもMediumのファンがいますよ? またオフィスを開いてくださいね、と声をかけたら、日本にはうちは何もしてないでしょ?とPRに訊いてました。PRの方は「いえ、あったんですよ…。」と諭すような、なだめるようなおだやかな声で答えてたけど)

それはともかく、「日本ではいまは撤退」だけど「英語圏ではまあまあ検討、課金も成功」なの?ぼちぼち?と思いつつも、どこがどんなもんなのかMediumについてもうちょっと調べたいと思ったまま数か月も放置していた。そこに、上の記事である。

インターネット市民からの今回の指摘はこうだ。

「世界一お金持ちでも、自分のブログにmediumを選んだのか!」

「どこのメディアだってあなたの記事だったら受け入れただろうに、よりによってMedium。編集者達のむせび泣きが聞こえる」

というのはMarshableの記事のなかに採り上げられたツイート。まず「無料のブログ」ということもあろうかと思うけど、明らかにMediumが読みやすい(うえにツイッターからの流入もしやすい?)ということがあり、さらに、2つめのコメントについては、いかなる編集も外部から加えられないことを希望したのではないか、ということ。この点については日本のタレントさんとかもそうだろうなと思う。Faxとブログは他人の改変はいらない。これ、良いこと。

Vergeにいたっては少し角度が違った様。サブタイトルからして「The ultimate flex, on the underdog platform」なので、落ち目のプラットフォームですごいのが出たみたいなニュアンスだと思うんだけど、「ベゾスは文章がうまいし、今日はMediumにとって一番いい日になったはず」といった皮肉な様子から、Mediumはアメリカでも決して「絶好調」とは捉えられていない向きがあるということだ。おそらく肌で感じる使われて無さなんだろうか。

まあ、それに比べれば、日本では本当の意味でMediumが「話題」になったことはまだないのだからレベルは違う。今回のニュースでも日本のメディアは「と主張した」「と公表した」などと手軽にまとめていて、「Mediumで記事を公開し、ツイッターでリンクをつぶやいた」とはあまり書かれない。VergeやMarshableでクールだといってるのは、この、重大な情報を発信する個人の権利がセキュアされる経路がいま、これだったのね、ということではないかしら。

話題のはなしはここまで、Mediumは今後どうなるのかなというのは、ずっと個人的に気になっているところ。私企業なので業績の話はあまり数字が出ず、サブスクライバーの変遷とかも数字もあまりでない。一度は、「媒体に対して場を提供する」という案を提案したMediumだけれど、一度これは撤回して、現在は「有償ユーザーに対して選別したよい記事を届ける」というサービスによって顧客の囲い込みとコンテンツのクオリティに力を入れている。

じつはこれは、「誰でもプラットフォームに乗れて読まれやすい場で書ける」点ではまったく同じ日本のnoteと正反対の動きだ。noteは個人に小遣い稼ぎを可能にすることで「応援」して「もっと書きやすい状態」を提案していく思想なのかと思う。読み手も書き手も自由っちゃ自由。
Mediumの場合は、もっと雑誌に近い。ライターはプロもいるだろうけどさまざまで、キュレーションしてセレクトし、読者に届けるというほうに力を入れているよう。広告なしで読めるのと、会員しか読めない記事があるが、記事は読者が選ぶのではなく、Mediumの編集側が選ぶ。Mediumは選び手がいるから書き手も読み手も自由ではないと思う。

さらに言えば、最近発表されたWordpressがGoogleと組んで中小規模のマスメディアの収益化をはかるニュースパックを提供予定というのがあったけど、これ自体はたぶん、似たようなパックをMediumは考えていたのかなと思う。でもそういう方向で入っていた既存メディアはMediumから抜けちゃったろうからなんか感慨深い。

上記のカンファレンスでは「これ以上にいまのところMediumにとって良いアイデアはない」(収益化について)、というふうなコメントをWilliamsはしていたと思うけど、なぜそこに至ったのかまでの詳細は謎だった。私なりに考えたのは、Mediumは一瞬にして、「ゴミ記事が増えてしまった」と思ったからではないかと思う。はっきりはわか
らないけど、一時期Mediumを拾い読していたころに「タイトルの引きばかりで内容がない」「Mediumもバカが増えて一瞬でつまらなくなった」みたいなコラムをMediumに書いているユーザーがいて、ユーザーが集まるって、結局そういうことかもね…と感じたのだ。英語圏ならその加速も強く、あらゆるPVアクセスがほしい、注目されたいユーザーが露出の多い場所に集えば注目の奪いあいになってクオリティが落ちるだろう。そんなことだ。もし、これが個々の執筆者のお金の儲けあいになったらどうなると思います? よい結果は待っていないだろう。