[メモ]電子書籍の発売日はどうコントロールする

ちょっとブログ本題から離れるが、iPadやGalaxy Tab等に絡み、電子書籍関連のエントリ。

電子書籍は「書店」という確固とした環境がない。
最近、某出版社で発売された本を某企業の運営する電子書籍販売ルートに載せたそうだが、やんごとなき?事情?で発売が遅れている。

発売時期に関する問題としては次のようなことがある
・現在の電子書籍市場の大手といえるAppStoreは、発売日がわからない。発売されない可能性さえもある。
・AppStoreでも課金、データ配信が自社サーバであれば、発売日を守ることができる。18禁なども売れる。しかしコストがかかる。そこで媒体丸ごとホスティングとか、電子書店への委託などが考えられている。日本企業であれば発売日は守れそうということ(上記の発端の例を考えるとそうとも言えないが…)。
・いったん発売されれば在庫切れがないのは、いいところ。ただし、ロングテールで、データを削除することなくメンテナンスし続ける(し続けてもらう)必要がある。
・分配率や種々の都合によって、販売価格が電子書店ごとに異なる可能性がある。でも、購入者は所有デバイスを意識する必要もある(PCで読む!という前提はあまり高くないと考える。実際にいると思うけれど、ビジネス書や一般書は違うだろう)
・自社サイト販売であればやんごとなき理由で発売日がずれる心配はない。ただし、宣伝(周知)には大きな問題がある
・すでにあるような電子書籍版の出版でいう卸や、電子書籍書店がある。これらに複数直接アクセスして(個人力・企業の営業窓口など)発売日を守って売ることは可能。雑誌のような超速の印刷でも1〜3日程度はかかる。一般書籍なら見本出来まで下版から1週間くらい(下版から発売まで3週間くらい)。書店との個別すりあわせは数が増えれば重労働だ。電子版の先行発売もかなりハードスケジュールになりそう。そうなるとEpub同時配布とか、最終データからの加工が多いと体力が必要そうだ。

・ウェブキャンペーン、クチコミなどがないと、リアル書店のように本を見てもらう(知ってもらう)状態を作るのは難しい。

・あといまのところiPadは、新しいもの好きと小さな画面が嫌いな高年層が買ったところで伸び悩み日本では20万台くらいじゃないかと言われているそう。iPhoneは1年前の時点で200万台越え(250くらいなのか?)、電書レベルのアプリなら今後増えていくアンドロイドもある(ブラウザ、Flashベースはとくにすぐに)。電子書籍はスマートフォンとEpaper(まあEpaperは好きキライあるみたいだけど)にも対応するべき。というか最低限スマートフォンに対応すべき。

・グラビアページが全部スキャンでダウンロードできたように、マンガの発売日当日には、テレビアニメと同様、P2Pやどこかのサーバに無料データが出回っているだろう、というのはありそうな話。学校に1人自炊名人が居たら、発売日にみんなしてPSPからデータを買うよりもはやく、クラス全員に複製データを共有できそうだ。

* * *

・出版社がなかなか乗り切れないのは採算ベースがわからないからだ。コンテンツを作ったこと(本を書いたこと)がない「くせ」にウェブ、ソフトウェア業界のほうが電子書籍に前向きなのだとしたら、ソフトウェア系の採算の合わせ方(原価率)が似てるからだろうか。でも、本ってすごい単価が安いんだよね。月額料金もないし。有料メーリングリストが一番売れるWeb上の読み物なのだとしたら、有料定期購読雑誌・書籍という形式のほうが有望?

・と、いいつつ、やはり、書籍を作らないで電子版のみ売るということはあまりまだ考えていません。

・書店では書籍の見本出来から2週間(大手ならばもっと短く?)程度でだいたい横並びに本を全国の店頭へ置くことができる。実際には上記の代理店業務のように電子版発売日がずれることもある。また今度となるとビジネスチャンスを逃す。

・そんなことを考えているうち、(栗コーダーカルテッドの)ライブチケットをどう買えばいいですか?という質問と答えを思い出した。1)チケット販売会社:手数料が高くアーティストには不利・お客も発行整理券番号が遅いので不利 2)当日券:これも店の取り分が多くなるとかでアーティストには不利、お客も価格が高く最後に入るので不利 3)一番お得なのはライブハウスの店頭前売り券(アーティストに落ちる楽が大きく、お客もお得)という話を思い出した。

・電子書籍の場合は、本はどこで買っても同じ価格だ、という前提が崩れる。でも、チケットのようにライブハウス(版元)のショッピングカートで買えば一番安い!というような約束もできない(独禁法違反)。
でもよく言われるアマゾンのやり方ってこれだと言われている(電子書籍は人寄せパンダ)。

・あと、電子書籍は本に比べたら、売り場によっては不良品に近い可能性もあるという話もある(Google Editionsの考え方、Epubのような汎用フォーマットのデバイス検証を誰だどこまでするの?)。利便性を考えて多少不良でも同じ値段で買ってくれるのか?どうなのか?
 
おちなしです。

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