「こころと脳の相談室」を電子書籍化:『家の中にストーカーがいます』

Impress QuickBooksから「こころと脳の相談室」の林公一先生のQAをまとめた電子書籍『家の中にストーカーがいます』が発売されました。今回、企画編集のお手伝いをさせていただきました。
家の中にストーカーがいます
このタイトルを聞いてすぐにピンと来た方は通ですね。ここではご存じない人に概略をご紹介したいと思いますが、インターネットの便利なサービスに「はてなブックマーク」というのがあります。はてなブックマークは、面白い記事をURL保存して、タグ付けをして分類保存したり、コメントを入れたり、入れなかったりできるオンラインサービスです。コメントを入れて保存しておくことで、「この記事はおもしろいねー」ということがSNSのように共有できます。また、たくさんブックマーク(ブクマ)がつくと「ほってんとり(hot entry)」となって、はてなブックマークのサービスページで記事が自動的に紹介されたりして、さらに面白い記事がインターネット上で広まっていく。そんなサービスです。
その「ほってんとり」としてよくブクマユーザーが親しんでいるのが林先生の精神科QAです。あえて本編でなくブクマでご紹介します。
http://b.hatena.ne.jp/entry/kokoro.squares.net/psyqa1087.html
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.so-net.ne.jp/vivre/kokoro/psyqa1087.html
以前のブクマでは600以上だったそうです。わたしも林先生のサイトをブクマきっかけで知りました。
林先生のサイトのインパクトのあるQA、これらは治療目的ではないが、うつ病をはじめとする精神病をわずらった知人がいる人や、自分のこころの具合が気になっている人達からも多く読まれているネット上の資産ともいえるものだと思います。
ちなみに電子書籍に収録した内容には、先生が2013年現在からの視点でコメントを付け加えていただいていますが、なるほどなあ、と独りうなってしまったコメントがありましたので、ちょっと引用してみたいと思います。

◆あとからひとこと
擬態うつ病。私の造語であり、2001年に私が出版した本のタイトルである。うつ病と称しているが、本当はうつ病ではない。うつ病とされているが、本当はうつ病ではない。そうしたものの総称が擬態うつ病である。擬態うつ病が日本社会に蔓延することを防止したいというのが、『擬態うつ病』の執筆意図だったのだが、力及ばず、その後、擬態うつ病は増殖を続け、現代では「新型うつ病」という名前を獲得し、さらにその数を増やしつつある。

林先生が過去に出版した擬態うつ病関連の書籍(いずれにも、精神科QAの内容も収録されています)では、「擬態うつ病」(2001)、「それは、うつ病ではありません!」(2009)、「サイコバブル社会」(2010)などがあります。ちなみに香山リカ先生が『仕事中だけ「うつ病」になる人たち』を出版されたのが2007年。映画化されヒットしたマンガ『ツレがうつになりまして。』は2006年。ほかのうつ病をテーマにしたマンガで有名だと思うものに、『精神科へ行こう!』がありますがこちらの初版は1999年です。
2000年代の初頭は日本に於けるうつ病普及期、後半はうつ病のポピュラリズム期(そんな言葉あるのかな…)であったのかな、と思います。そのような中で、臨床医からすれば、うつ病でない人やうつ病以外の病気の人までもうつ病と思い込む例が際立ったことから、上記のような書籍が出た。さらに「サイコバブル社会」という著書の中では、国をあげての広告において「心の風邪」を強調することで、うつ病への偏見のハードルを下げた一方で、うつ病や精神疾患は「風邪のようにほうっておいても治る」とか「誰でもかかるもの」といった誤解も植え付けてしまったということが書かれています。
一方で、テレビ番組などの功罪か?、今年においては、「新型うつ病」という呼び名がすっかり定着してしまったようにも見えます。引用部にある通り、「うつ病」という名前を獲得しているところが問題なんですよね。その名前ですと、「新型」だけど“正規”の「うつ病」ですよ、と名乗れるからです。
わたしは医学関係者ではないですし、診断方法には賛否両論あると思っていますが、たとえば牛丼でなく豚丼を新型牛丼と言われたら違和感あるなあ。と思います。「新型うつ病」の多くは適応障害じゃないのかみたいな話を含め、今後も議論が進んでいったらいいなーと思っています。
ということで、精神科QA、重い内容も暗い内容もありますが、質問者の言葉が生であり、その勢いがなんともすごいです。また先生の回答ももちろん本書の魅力。電子書籍化にすることによって、さらに多くの方々に知って頂けたらと思う次第です。ちなみに、現在ツイッター上では、「林先生は実在の人物なのか?」といったコメントも見られますが、担当者が先生にお会いした顛末が下記のブログにありますのでぜひご覧下さい。

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