「EPUB3電子書籍制作の教科書」制作の流れに沿って基礎から学べる一冊

最近、新しいEPUB3関連の書籍が発売されましたので紹介します。林拓也さんの「EPUB3電子書籍制作の教科書」(技術評論社)です。

本書は以下のような流れになっています。

 <目次>
01 EPUBの特徴・メリットの理解
02 EPUB制作の概要と準備
03 XHTMLコンテンツドキュメントの制作
04 ナビゲーションドキュメントの制作
05 パッケージドキュメントの制作
06 CSSの概要と設定方法
07 画像、オーディオ、ビデオの利用
08 日本語組版の設定
09 パッケージ化、バリデート、動作確認の手順
10 CSSによる様々なコンテンツ表現
11 EPUBの応用的な使用
12 関連のトピック
 
 B5正寸288ページとボリュームもたっぷり! しかし恐るることなかれ。大変親切な、EPUB3の基礎から学べる一冊になっています。

本書は、制作の立ち上げから検証までの制作順序に沿ったリファレンスになっているので、比較的に現場の作り手にとってとても頭に入りやすい流れになっていると思います。逆に言えば、どうやって制作フローを考えるかわからない場合も、本書の流れに沿って進めていけばよいのではないでしょうか?

01~05は、概念と文法基礎の解説です。EPUB3の基礎知識や分法基礎がわかりやすく整理されていますが、じゃあ実際epub:typeはどう使うの?とか、IDの値はどうするの?といった、ちょっと作り始めようとして最初にぶつかる具体的な疑問がコラムできめ細かくフォローされているのがありがたいです。また、CSSとXHTMLの基礎的な解説もあり、文法に弱い人もここで再確認できるようになっています。

01と最終章の12では、この半年から数ヶ月で刷新されてきた情報も多いので、変化の速さを実感し、自分の知識バージョンアップにもなりました。

06~09は基本的なコンテンツ表現の方法からEPUB化(パッケージ)の方法までをコンパクトにまとめています。現在EPUB3がリフロータイプでは、文字中心の書籍に利用されていますが、その1段組の本を作るのに必要な知識です。

さらに段組やメディアクエリーなどを使った上級の表現も、10で扱われています。ちなみに、リフロータイプのEPUB3でCSSでどんな表現ができるかを幅広く紹介した本は「EPUB3スタンダードデザインガイド」になりますので、10章を読んでもまだ物足りない方はぜひご高覧ください(笑)

11は、読み上げ機能のメディアオーバーレイと、数式を表現するMathMLという、EPUB3の2大目玉拡張の具体的な使い方を紹介。さらに、この春以降に出てきた「固定レイアウト(Fixed Layout)」もあります。ここが読みたかった!という方も多いかもしれません。

本書の最初で制作ポリシーについて触れていますが、これは制作側にとってとても重要なことだと思います。そしていまいままだまだ問題になっているかな、と思います。
EPUBはHTMLとほぼ一緒とあってけっこう「自由」に作れてしまう部分がある一方で、いろいろ分からない・難しいと言われる(感じる)のは、本当に自由に作ってしまって規格(リーダー)に載るのか?という不安が大きいからではないかと思います。この部分はいくらリファレンスで正確な情報を紹介しようとも最終的には作り手の判断、リーダー側の対応などにゆだねられるところがあります(仕様だからといってもすべてサポートされるわけではないなど、つなひき部分が、難しいですよね??)。

いくつかのベストプラクティスが出てくることが、より制作者の悩みを軽減できると思いますが、そのためにも、本書のような丁寧なリファレンスは役立つでしょう。

さらに、林さんのセミナーやチュートリアルはとてもわかりやすいので、EPUB3チュートリアルの本もそのうち出していただき、より多くの人にEPUBが馴染みのあるフォーマットになればいいなーと、次回作にも期待しています!

EPUB3電子書籍制作の教科書はこちら

あわせて、EPUBスタンダード・デザインガイドもどうぞ