「会話もメールも英語は3語で伝わります」内容紹介と感想
先日、アマゾンで馬鹿売れしている「会話もメールも英語は3語で伝わります」(ダイヤモンド社)という英語学習本があり、手に取ってみました。
英語本の売上げランキングは、だいたいTOEIC対策本が永遠の上位を占めているので、あら、めずらしい。
あとから聞いたところ(届いた本、発行から5か月でなんと8刷とのこと、帯にも書いてありました…)、テレビ番組に出演してから急激に話題になっているのだとか。
さて、では、どんな内容だったでしょうか。
本書の主張:複雑な文をやめてSVCでシンプルな文章を作るスキルを磨くと、英語のアウトプット(会話、メールなど)がうまく行く。
日本人の話す/書く英語が伝わらないのは、日本語を直訳しようとするからで、be動詞と漢字を直訳した単語を使いすぎている。だから、英語の動詞を中心にすえたSVCで、シンプルな動詞を使って英語にしましょう、ということだと思います。帯にある
× I am a English teacher.
○ I teach English.
みたいなものは、「えっ!わたしの英語×だわ!(えっわたしの年収の感じで…)」と、英語学習者には刺さるものになっているのではないかと思います。
では、本書の詳しい内容を紹介しつつ、感想を書いてみたいと思います。
chapter 1 「日本人の英語」が伝わらない理由
ここでの「伝わらない」は、口語として日本人以外に英語でしゃべった場合と、書いた場合に、相手に「??」を発生させる伝わらなさのことを紹介していると思います。逆に、英語を勉強しているのに英語でしゃべれない日本人の特徴をうまく捉えていると思います。たとえば
- 英語らしい英語(世間で「ネイティブはなんちゃらしている」と言われるもの)や学校で習った英語は、難しすぎて使えない!(あるいは使っても文法ミスなどを起こしやすく失敗が多い!)
- 日本語直訳英語が招くまどろっこしさ(文が長くなったり、主語が適切でなかったり…。日本語っぽい英語のこと)
- だからといってブロークンイングリッシュでは伝わることは僅か。
英語らしい英語は難しくて、日本語英語はダメというのは、たしかにものすごく頷けるけれども、じゃあどうすれば、となりますよね。そこで、、、
chapter 2 「3語の英語」は動詞が決め手
本書のソリューション、SVC英語の紹介となります。
ポイントは
- be動詞をなるべく使わずに動詞(action)をメインに据える
- 受動態もなるべく避けて、シンプルに、そして、do、make、performなど誰でも覚えていそうなカンタンな動詞をなるべく使っていく
のがコツだそう。
たとえば、本書の例をみてみると、
I like English. (p.52)
が典型として紹介されています。I teach English.と同じですね。
ありがちな×の例はおそらく、
× I like speaking English.
× My favourite subject is English.
× English is my favourite subject.
とかでしょうか。また、
× He is a leader of the projetct.(p.54)
○ He leads the project. (p.54)
というのもあります。○はSVC(主語+動詞+目的語)構文なのでシンプルでストレートに伝わる感じ。ということ。また、
○Touching the door handle will unlock the door.(p.73)
などは技術翻訳をされていた著者だけあって、なるほどなーと思いました。動名詞を使った主語を持ってくるとSVC でシンプルな文にできますね(ちょっとレベルは高くなるような?)。
たしかにさらっとこんな言えるといいなと思えるシーンがよくあります。わたしも先日、「あたらしいチームでは(人員不足で)、まだまだスタッフを募集してるんです。」と言おうとして
The new team needs to hire more staff.
と言ったら、相手に
Oh! they need more staff.
と返されました。このようにシンプルさの追求は必要だな!と思いますし、気をつけてトレーニングしないとどうしても頭の中に浮かんが日本語を翻訳してしまうのだなあと。
ただし、p.65のdon’t likeをdislikeに変えましょうという提案は、個人的にはクエスチョンマークです。didn’t take breakfast を skipped breackfastと言うのはいいなと思うのですが、dislikeという積極的な「嫌い」を頻繁に使うのは、なんとなく、気が引けました。みなさんはどうでしょうか?
もちろんそのほかの多くの「3語で動詞中心に言い切ろう」という例文がこの章に上がっているので、本書の主張内容を知り、会得したい人は、一度この章を目を通すのがよいのではないかと思います。
chapter 3 これでOK!「3語の英語」の組み立てパターン
2章で紹介された内容の文法組み立て説明です。実践できるようになるためのチュートリアルといった感じなので、2章の内容を理解できなかった人がよむとよい感じになってます。
なお、ここで出てくる動詞は
have, use, include, like, enjoy, surprise, interest, dislike, disable, unveil, unlock, uncover, benefit, replace, relocate, feature, highlight, need, require,miximize, minimize, achieve, allow, permit, enable, cause, increase, decrease, reduce, raise, lower, explain, discribe, discuss, summarize, outline, outnumber, outweigh, outperform, double, tripleでした。
この章の最後には、使える動詞がリストで並んでいて確認しやすいです。わたし、outnumberは知りませんでした…(!)
英語をアウトプットする上での動詞の使い方を、日本語との差や使う場面、感覚を含めて学ぶのは、とても重要なのだなあと思います。
ただ、ここに出てくる動詞は、本当に使いやすい動詞だと思うのですが、中学校や高校などで使いこなしたことがない方、単語自体もあやしい人もけっこうおられるのではないでしょうか。英会話の学習者は、どこかのレベルになると(中級の入り口とか)このあたりを使いこなす練習をすることになるように思うのですが、1章で提案されている「かっこいい英語は難しい」「ブロークンイングリッシュになってしまう」層はもっと下を基準にしているので、ちょっと、、、ここで挫折する人が出るかなとも思いました。(causeやenableの動詞はB2単語なのでちょっとレベル高め。それぞれ高校1年、高校2年で習う単語のようです。)
chapter 4 「3語の英語」に情報を足していく
ガラっと文法復習っぽい章になります。
ざっと、時制の使い方、助動詞の選び方、副詞の挟み込み方、前置詞の使い方、関係代名詞の代わりの分詞構文、becauseを連発しないための関係代名詞(補足情報、結果)が採り上げられています。
このあたりは、いかにも自然な英語にするめに必要な知識なので、この章を乗り越えるとだいぶん英語をアウトプットするときのイメージが変わりそう。ちなみに、例文があるのでいわんとする文法説明は、とてもわかりやすくなっています。
個人的な感想としては、3語英語に言い替えたときにすごく納得がいく例文と「うーんこれはどっちでもいいのでは(笑)」(あるいはシチュエーションによりけりでは)というような例がありました。
chapter 5 実践!「3語で伝える」ために、ここはバッサリ捨てましょう!
ここはおさらい件、トレーニングの章でエクササイズがメインです。「SVOCを捨てる!」という見出しがなんとも衝撃的でした。
以上、ざっくりした内容でした。上記でおわかりのように、本書は3章までと 4章以降ではだいぶん毛色が違いますし、3章はやさしい文法本ですが、1章の意味がわかるだけではくじける人も多いかなという気はします。
本書を最後まで読むとしたら、我流で勉強し・日常的に会社などで英語を使われていて、あまり英語が伸びてないな、英語わかってるつもりなのにどうもインド人に伝わらないな〜、とか、社用英語メールつらい〜〜などと感じる、中級以上のレベルの学習者に向いていると思いました。
本書が大ヒットしているとなると、英語ニーズのレベルがかなり高くなってきているのか、某テレビ番組の劇的な効果なのかちょっと気になるところです^^;
ちなみに、動詞をメインに据えた学習法だと、 同じダイヤモンド社の「英語は「インド式」で学べ!」の内容がけっこう近く、こちらの本はさらに易しいつくりになっていると思います。ダイヤモンド社やインド式の回し者では決してないのですが、以前インド式をマンガにアレンジしたのを読んでめっちゃ面白かったのでおすすめです。図解版も出てるので、本書が難しいかな、ちょっと疲れたかな…と思われた方にはわたしはこちらの本をおすすめします。