memo! 確定申告の際のNFTの売上の申告について
毎年、個人の前年の所得に関しては、3月15日の〆切りで、所得税の確定申告があります。この申告ににもとづいて所得税の納税を行います。また、個人事業主・フリーランスなどは、企業との取引においては所得税が源泉徴収されているため、確定申告を行った結果、超過した支払い済みの税金は「還付」してもらえます(還付金は、申告内容が受理されたあと3週間〜1ヶ月程度で指定金融機関に税務署から振り込みされます)。
確定申告は、サラリーマンやパート・アルバイト、無職などの人も、一定の条件に当てはまれば行う義務があります。そのひとつが、サラリーマンなど普段申告の必要がない人が、副業等で20万円以上の所得がある場合です。所得はその収入を得るのにかかった経費を差し引いての金額となるため、20万円の収益があがって1万円の経費(例えば、画材とか)がかかっていれば、申告の必要はなく、税金も基本的にかかってきません。
暗号資産も儲かれば申告の対象だが…
今回のテーマのNFT(Non-Fungible-Token)の売上の申告について述べるために、まず、NFTの売買に利用されている暗号資産(仮想通貨、最近はこの呼び方はやめて、国の指針では暗号資産に統一することになったそうです。なお、英語ではCryptocurrencyと言いますが、「暗号化-通貨」みたいな直訳英語になります。が、Currencyというのは特定の国でお金として通用する、物との交換価値があるものという意味あい。Wikipediaによれば、Cryptocurrencyとは「国家や銀行といった中央集権によらず、維持/メンテナンスされる、コンピュータネットワーク上で交換のための媒体として機能するようにデザインされたデジタルの通貨(Currency)」となっています。おっと前置きが長くなりました)の申告と納税について触れてみましょう。
「暗号資産」は交換価値はありますし、すでに多くの人が経済的価値を感じているものではありますが、いまのところ、日本政府はそのものをお金とは捉えていません。例えば、個人貿易などでアメリカドルで売上を得たり、あるいは仕入れに中国元を支払ったりしたら、それは、収入や経費としてカウントします(為替計算を行います)。
ところが、暗号通貨は「トークン」と呼ばれ、それ自体は、どこでも通用する日本円のようなお金と対等なものではありません。例として似ているのは、電子マネーでいう「PayPay残高」など、ほぼお金のような交換価値を持つ(買い物ができる)けれど、実際はPayPayというサービス内でしか使えない。もっとざっくりいうと、今盛んに配布されているポイントのような、お金じゃないもの(税制的に)。特典でPaypayポイントをもらっても、それは現金にできないので(できる場合もありますが、できない残高もありますね)、そのものは所得とはみなさないでいい、というのと似たところで、いまのところ、日本の税務署は「暗号資産を人からもらったり、何かと交換することで得ても、それ自体は収入とはみなさない」といえるでしょう。
暗号資産を移動せずに保持しているだけであれば収入とならない
いったんまとめると、
- 一般に、確定申告では過去1年間に20万円以上の収入を本業以外で得た人は申告の義務がある(場合によって、所得税を納税したり、還付されることになる)
- 日本円でなくて海外通貨などで得たお金や使ったお金も収入や経費の対象になる
- 暗号資産は、日本円や海外通貨とは違い、お金ではないので、ただ、もらったり、買ったり、受け取っただけなら、いくら持っていても所得申告の対象ではない。
しかし、暗号資産ならば、ずっと所得(収入)と見なされないわけではありません。暗号資産をドルや円などの通貨に換金したとたん、それはお金を得た=収入を得たとみなされます。さらに、暗号資産を別の種類の暗号資産に変換しても、いったん価値が発生したということで、それも収入になります。
- つまり、暗号資産は、持っているだけなら税金はかからないが、別の通貨や暗号資産に交換したタイミングでそれは所得とみなされるので、価値が20万円以上なら申告対象になる
- 収益の計算は、お金として価値をもった時点での時価で計算する。仮に1月1日に換金したときに1トークンが100万円だったとして、申告を行う翌年にはそれが300万円でも50万円でも、申告時の計算は、売買時(換金時)の時価がベースになる
- 暗号資産を購入し、値上がりしたものを売却し、円などで利益を得た場合、暗号資産の収入は「譲渡益」となり、「暗号資産を円などに換算したときに得た金額」–「それに対応する数量の暗号通貨を得るとき(購入時)に必要だったお金(時価)」を引いて、残る額が譲渡益となります。税率は、申告する個人の所得総額が関わるため5〜45%の範囲となります。
- 暗号資産の取引所や販売所は、源泉徴収を行っていないので申告は自分で行う必要があります。
- 暗号資産の収益は、雑所得にあたる(営業所得とは別に、分離課税になります)。このあたりは投資関連と似てはいます。
ではNFTの売上には税金がかかるか?
暗号資産関連の課税有無のポイントは、買ったにせよ、もらったにせよ、交換の対価とした得たにせよ、暗号資産を所有しただけでは所得とはみなさず、申告の対象にはならないが、換金すると課税対象になる、ということでした。
では NFTに話を戻しましょう。
NFTアートやNFTを使用した権利などを暗号資産を対価として「販売」することが多くなっています。一番馴染みがあるのは、イーサリアムネットワークを使っているNFTマーケットプレイスの例です。一番有名なのはOpenSeaです。制作したNFTアートが売れた場合、クリエイターの手元にはイーサリアムが送られてきます。ネット上のウォレット(デジタルウォレット)にそのイーサリアムは入ってきます。必要があれば、①別のウォレットに送信したり、②あるいは円などに換金してお金として引き出すことができます。①は税金はかかりませんが、②は課税対象となります。
また、NFTは「自分でNFTを作成していないが、購入したNFTを販売する」という転売のケースもよくあります。これも作成したNFTを販売するのと同様に、①イーサリアムで買ったNFTを売って、イーサリアムを得た段階では税金はかかりませんが、NFTを売って得たイーサリアムを換金すると課税対象となります。
あるいは、円などと同様に、イーサリアムをいっぱいもらったので、いま上り調子のビットコインに交換した!という場合、ビットコインを得るのにかかっただけの価値(時価)の円でイーサリアムの譲渡益があったと判断されます。
カンタンにいうと、売っただけならOK(ロイヤルティもです)ですが、経済的な価値の発生するタイミングが課税ポイント、みたいな考え方らしいです。
NFTについてのQAが、国税庁で今年初めて発行されましたので、個別の事例については以下が詳しいです。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/0022012-080.pdf